2014年5月24日土曜日

「 ひとつの過ち 」


たったひとつの過ちで、
取り返しのつかない事態を起こしてしまうことがある。

あの時、どこで判断を間違えたんだろう。

楽しかった時間も、うかれていた自分も
今のわたしから見ればただのバカ野郎。

この時着ていたお気に入りの服は
もう着れないかもしれない。

まったく、何もかもが台無しになった。

そして最後に残ったのは、
思い出すだけで吐き気を催す胸やけだった。



  * * * * *



レシピを見ながらその通りに
“豆腐とシーチキンで出来るチキンナゲット”を作った。

豆腐の水分を抜き、材料と良くまぜ合わせ
油であげれば簡単にたっくさん出来てしまうという内容だった。

はじめて作る料理は、上手くできるか不安もあるけど
どちらかというと楽しさの方が大きい。
豆腐とシーチキンで出来るのであれば、ヘルシーで身体にもいいね!
と思って作っていった。


ところが、
これを油に落とした瞬間に私は何か間違いを犯していることに気がついた。
確かに混ぜている時から、たねがこんなに緩いけどナゲットになるのかしら?と
意識しない範囲で思っていた。それに気づかないくらい気分はノリノリだった。

まとまることを知らない物体は、油の上に果てしなく広がり
かろうじて薄っぺらくつながっていた。
あまりにも薄いナゲットになってしまうと思ったので、
継ぎ足しをしてなんとか厚みを出した。


分厚く大きく広がった物体。
これをひっくり返そうとした時、重くて何度も失敗し
えらい油しぶきを浴びてしまった。
キッチン周りも洋服もギトギトになった。

何とか液体を全て使い切り一段落終えた後、レシピをもう一度読み返してみた。
レシピに書かれた通りに作れてはいた、でも材料に豆腐一丁と書かれており
この出来上がった物体を見つめながら、きっとこれは木綿豆腐一丁だったのだ。

そう思った。


わたしが使ったのは、絹。




冷蔵庫の中で、たくさんのナゲットが
静かに出番を待っている。

この、思い出し胸やけが収まったら、
美味しく生まれ変わらせてあげるから、約束する。

でも、その前に
冷凍庫行きかな。

* * * * *

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