2014年5月13日火曜日

「 ところてん 」



うちの父は糖尿病で、
夏、家の冷蔵庫にはいつもところてんがあった。
カロリーの少ないところてんは、父の夕飯のおかずの一品だった。

父がズルズルっと音を立てて食べている。
わたしはテレビを見ながらその音を聞いていた。

大抵ガマンができなくなり、わたしは母に「ところてん食べていい?」と聞く。
こうして子供の頃の私は、食後によくところてんを食べていた。
糖尿の父は「こんな味のないもの美味しくないよ」と言っていたけど、
父のその音を聞いて食べるところてんは美味しくて、
いつの間にかわたしの中で夏の味となっていったのだと思う。


父は何を食べても美味しそうに、そして大事そうに食べる。
それは、糖尿で食事が限られているからなのか、
昔貧乏で食べれないことを経験したためなのか分からないけど。
そして食後に必ず父は「 ん〜〜〜 おいしかったっ 」と言った。




今日も昼間は気温が上がった。

そんな中スーパーでところてんを見かけ、
父のことを思い出し無性に食べたくなってしまった。
明日買いに行って、冷蔵庫で冷やしておこう。
そして夕飯の食後に食べよう、カラシをうんときかせてね。



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