2014年6月20日金曜日

「 手 紙 」



20代の頃からいつも頭の中でイメージしていた道があった

少し前まで私は高い場所から遠くの景色を眺めていた

そこにいる時はあそこへ行きたいと指差すことができたのに



そこへ向かうには、
まずその高い場所から下へ降りなければならなかった

下へ降りるとこれまで指差していた所が見えなくなった

どうやったらそこへ行けるのか時間だけがどんどん過ぎていく



もう、あの指を差していた方向へは行けないんだ

あきらめよう




そう思うたび、心の中でなにか丸いものが
コロコロ転がっているのが分かる

そして私はこの丸いものの正体を知っている



これは、10代のころ見つけられなかったもので
20代の終わりにやっと見つけたもの



これからもし、いつも見ていた景色を見ないようになったら

そして、この丸いものがなくなったら

わたしは指差す方向へ行くのをあきらめようと思う





これは、未来の自分へのお手紙です。






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