2014年1月28日火曜日

「 銀 杏 」



銀杏を、美味しいと思うようになったのはいつだろう。


子供の頃、
祖父の法事で出された茶碗蒸しに銀杏が入っていた。
わたしは「ンニャ ンニャ ンニャ」となるべく舌にあてないように噛んで
鼻を膨らませながら飲みこんだのを覚えている。

でも、その隣で同い年の従姉妹は銀杏好きと言って
美味しそうに食べていた。
それは、とても熱い日だった。


今は、銀杏の入っていない茶碗蒸しに出くわすと
心からがっかりしてしまう。
それくらい銀杏が好きになった。


でも一体いつ、何をきっかけに銀杏が好きになったのだろう。


あの苦みとプラスチックのような歯ごたえ
それが嫌いだったのに、今では真逆の感情を抱く。



揚げ銀杏、焼き銀杏、銀杏串など
メニューに銀杏と書かれていたらとりあえず頼む。


好きな食べ物の思い出より、
嫌いだったのに何かのきっかけで
好きになった食べ物の方が心に残るのかも知れない。


わたしは、人が一生懸命作ってくれたものは何でも美味しく感じる。
または、一緒に食べていた人達が自分の好きな人たちで
楽しく食べていればどんなものも美味しく感じる。


それで思う、美味しさを決めるのは
その食べ物ではなくて、そこで一緒にいた人達なんじゃないかって。


銀杏が好きになったのは、
きっと会社勤めを始めた頃ではないかと思う。


働く厳しさを知り、そして暖かい同僚に囲まれて
苦い銀杏を美味しく感じたのではないかと思う。

* * * * *

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