2012年2月26日日曜日

「 自分の部屋 」





















小さい頃から私は、ずっと姉と同じ部屋でした。
ある日、どうしても自分の一人部屋が欲しくなり、
家の2階のトイレを自分の部屋にしたいと親に交渉しました。

母はすんなりと「いいわよ」と言いました。

たしか、夕飯前の夕方だったと思うのですが。

私はさっそく自分の部屋に荷物を運び、
トイレットペーパーをしまう用の棚に本や置物を置き、
窓際に貯金箱や人形を並べ、便座は作業机にすることにしました。

何回か、まだトイレだと思っている家族がドアを開けましたが、
「ここは私の部屋よ!」と追い返しました。

まず、自分の部屋の便座机でお絵描きをしました。
初めての一人部屋は新鮮でとてもわくわくしていたのを覚えています。

私は消しゴムを、便座と便座の間にある
ちょっと空いたスペースに置きました。
そしてまた消しゴムを使おうとした次の瞬間、
消しゴムは向こう側の水の中へぽちゃんと落ちてしまったのでした。


恐る恐る便座机のフタを開けました。

消しゴムは、一番深いところまで落ちていました。






このまま流してしまおうか、どうしようかと悩みました。

しかし、この消しゴムのせいでトイレがつまってしまったら大変だ…

しばし自分と戦った後、私は手をつっこんで消しゴムを取りました。


その時思ったんです。

ここはトイレだ、と。


夕飯前に、私は石けんで手を洗い、
一人部屋の夢をきれいに流したのでありました。




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