2014年10月31日金曜日

「 柿 」



私は幼稚園児のころ
仲の良い友達と人んちの柿をとって食べていた


 「あそこの柿は美味しいよ」


 あちこちの柿をとって食べ比べていた

 柿は洋服で磨いて皮ごと食べた
 渋い部分はかじってペッと吐いた
 柿を食べながら何を話していたか覚えている

 「ずっと友達でいようね、おばあちゃんになっても、天国にいっても」



 ある朝母がこう言った

 「あんた、○○さんちの柿食べてんの?」


 私はマズいと思った
 そういえば○○さんちは姉の同級生の家だった
 怒られると思った




 母は続けてこう言った

 「○○のおばちゃんがね、
  今度はピンポンおしてからとってねって言ってたわよ」


 怒られなかった

 むしろ母は「今どき柿泥棒なんてめずらしいわね」と笑っていた



 それから柿泥棒はやめた
 友達も小学校に上がると同時に引っ越してしまった



大人になってわかったことは、
「ピンポン押してね」と言ってくれたおばちゃんの優しさと
子供の頃の友達と過ごす時間はとても短く儚いということ






渋柿は干し柿にするとどうして甘くなるのだろう

思い出も年と共に渋い記憶が甘くなった





* * * * *

0 件のコメント:

コメントを投稿