2013年11月2日土曜日

「 傘 」


幼稚園の頃、雨の日にカッパを着るのが嫌だった。
夏は蒸れて身体に貼り付き気持ち悪いし、
濡れたカッパを干すのもとにかく面倒くさかった。

小学校に上がりカッパを着なくても良くなった。
傘はうれしかったけど、折りたたみ傘はなるべく使いたくなかった。
遠足の時などは、折りたたみ傘になってしまう。
折りたたみ傘を、なぜかダサいと思っていた。
おじさんが使うものだと思っていた。

中学校に上がり、ビニール傘に憧れた。
ビニール傘を持っている子がかっこ良く見えた。

高校生からバイトをするようになり、
自分でビニール傘を買えるようになった。
ビニール傘は良くなくす。
そして良く盗まれ、すぐ壊れる。


専門学生になり、雨が降ればビニール傘を買えばいい
という考え方が変わってきた。
使い捨ての考え方に疑問を抱いた。
勿体ないと思った。

お気に入りの傘を1本買って大事に使おうと思った。
お気に入りの傘を探すのは楽しかった。
お気に入りの傘にはなかなか出会えなかった。


ある日、お気に入りの傘に出会えた。
お気に入りの傘はオレンジ色で、持つ手が竹みたいなので出来ていた。
折りたたみ傘じゃないのに、袋がついていて、そこも気に入った。
お気に入りの傘一代目は、大事に使っていたけど、
最終的に竹の部分が抜けてしまってお別れした。
お気に入りだったので、ショックも大きかった。
今でも時々その姿を思い出し、またそんな傘を使いたいなと思う。


二代目の傘は買ってすぐに電車に忘れてしまいお別れした。
三代目の傘はついさっきまでそこにあったのに神隠しにあったみたく消えた。



お気に入りの傘を失うのが辛くなった。





そして、どうでもいい傘を買うことにした。
どうでもいい傘を買って4年経つ。
どうでもいい傘は、なくならないし、壊れないし、盗まれない。




どうでもいい傘を使っていて感じたことは、
お気に入りの傘を持ち歩いていた時の喜びが今は全くないなということ。


このどうでもいい傘が壊れない限り、
私は次の傘が買えない。

それまでに決めておこう、
持ち歩く喜びはあるけど失う辛さもある傘を取るか、
失う辛さはないけど、持ち歩く喜びもない傘かを。



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